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人が亡くなったとき、その人の配偶者や子などが遺産(借金なども含む)を引き継ぐことです。
亡くなった方を「被相続人」と言い、遺産を引き継ぐ人を「相続人」と言います。
相続人とは、被相続人から遺産を引き継ぐ者を言います。以下が民法で規定されている、いわゆる「法定相続人」です。
*被相続人の配偶者 常時相続人
*被相続人の子ども 第一順位
子どもが既に死亡している場合は被相続人の孫。(代襲相続)さらにその孫が死亡している場合は被相続人の曾孫。(再代襲相続)
*被相続人の父母 第二順位
父母が既に死亡している場合は被相続人の祖父母。
*被相続人の兄弟姉妹 第三順位
兄弟姉妹が死亡している場合は被相続人の甥姪。
*なお、行方不明の相続人がいる場合、行方が分からなくなって7年経過していれば、家庭裁判所から失踪宣告を受けて、既に死亡しているものとして扱われます(失踪の宣告:民法30条、民法31条)。
相続の対象となる財産には、土地・建物、現金、預貯金、有価証券などプラス財産だけで無く、借入金、住宅ローン、損害賠償義務、滞納した税金などのマイナス財産も含まれます。
プラス財産だけを選んで相続することはできず、マイナス財産がプラス財産を上回った時は、遺産の全てを放棄(相続放棄)するしかありません。
*限定承継についてはこちらを参照下さい
相続(遺産分割、名義変更)に期限はありません。しかし、相続の放棄や税金の申告には期限があり、それぞれ、期限内に手続を行なう必要があります。
*相続の放棄・限定承認 相続発生後3ヶ月以内
*所得税・消費税の準確定申告 相続発生後4ヶ月以内
*相続税の申告 相続発生後10ヶ月以内
被相続人の死亡と同時に相続が発生しますが、その相続財産は各相続人間の共同所有扱いになります。そのため、この相続財産を各相続人が所定の手続きに基づいて分割をしていかなければなりません。
相続財産を分割し、各相続人の単独所有とすることを遺産分割といいます。
相続放棄とは、相続財産の一切を相続しない方法です。 借金などの負の財産が明らかに多い場合 や、 家業を一人の人物に継がせたい場合 どにこの方法がとられます。 相続争いに巻き込まれたくない という理由で相続放棄を行う場合もあります。
相続人は、自己のために相続が開始されたと知った時から 3ヶ月以内 に、相続財産を承継するか、放棄するかを決めなければなりません。
民法938条
「相続放棄をする場合、相続人はその旨を家庭裁判所に申述しなければならない」
家庭裁判所に「相続放棄申述書」を提出し、家庭裁判所に相続放棄が認められれば、「相続放棄申述受理通知書」が交付されます。「相続放棄申述受理通知書」だけでなく「相続放棄申述受理証明書」が必要な場合、家庭裁判所にその旨を申請すれば交付されます。
注意点
限定承継とは、プラスの財産の範囲内でのみマイナス財産を負うという方法です。相続財産を調査してみて、借金などの負の財産が多いのか明らかでは無いときなどにこの方法がとられます。
例)
相続人は、自己のために相続が開始されたと知った時から3ヶ月以内に、相続財産を限定承継するか否かを決めなければなりません。
民法922条
「相続人は、放棄をする場合、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の証人をすることができる」
家庭裁判所に「限定承継申述書」を提出します。相続人が複数いる場合は、全員が共同して申述をします。ただし、すでに相続放棄をした人がいる場合、その人を除いた全員で申述をします。
注意点
「遺言」とは、遺言者の財産を、遺言者の死後、有効かつ有意義に活用してもらうために行う最後の意思表示です。世の中では,遺言がないために相続を巡って親族間で争いが起こることも少なくありません。遺言はこのような争いを防止するため、遺言者自らが自分の残した財産の帰属を決め、相続を巡る争いを防止しようとすることに主たる目的があります。 また、遺言がないときは、法定相続人しか遺産を取得出来ません。しかし、遺言があれば、法定相続人以外にも財産を渡すことができますし、お世話になった人に財産を渡したり、国・地方公共団体・公益法人などに寄付をすることも可能です。遺言の種類は以下の7つになります。
公正証書遺言は、そのまま相続財産の名義変更に利用することができます。自筆証書遺言や秘密証書遺言が効力を有するには、家庭裁判所の検認を受ける必要があり、もし、封をした遺言を勝手に開封してしまった場合、5万円以下の過料に処されてしまいますので、ご注意下さい。封筒に入った公正証書以外の遺言は、開封せずに家庭裁判所の検認を受けるようにしましょう。
検認後はその内容に従い、遺産分割の手続きを行います。遺言により遺留分が侵されていた場合、遺留分減殺請求(いりゅうぶんげんさいせいきゅう)を行うことができます。
遺留分について
遺留分とは、 法律の定めにより相続人が相続できる最低限の割合 のことを言います。遺言書で、法定相続分とは異なった相続分が指定された場合、相続人が遺留分減殺請求をすると、遺留分の範囲内で遺言は無効となります。
遺留分権利者
被相続人の 兄弟姉妹を除く法定相続人が遺留分権利者となります。
被相続人の財産の3分の1を遺留分として受け取ることができる
前号にあげる場合以外については、被相続人の財産の2分の1を遺留分として受け取ることができる。
遺言による指定がない場合、遺産は法律で定められた相続人(法定相続人)に対し法律で定められた割合(法定相続分)によって分割されることになります。
■法定相続分(民法900条)①配偶者と被相続人の子どもが相続人となる場合には、2分の1が配偶者、残りの2分の1が子どもの相続分となり、子どもが複数いるときはその2分の1の相続分を均分します。
②配偶者と被相続人の両親や祖父母など直系尊属が相続人となる場合には、3分の2が配偶者、残りの3分の1が直系尊属の相続分となり、直系尊属が複数いるときはその3分の1の相続分を均分します。
③配偶者と被相続人の兄弟姉妹が相続人となる場合には、4分の3が配偶者、残りの4分の1が兄弟姉妹の相続分となり、兄弟姉妹が複数いるときはその4分の1の相続分を均分します。
なお、被相続人の兄弟姉妹の中に、父母双方を被相続人を同じくする全血の方と父母の片方のみを被相続人と同じくする半血(いわゆる「腹違い」「種違い」)の方がいる場合、半血の方の相続分は全血の方の半分となります。
■特別受益・寄与分共同相続人のうちで被相続人から遺贈や生前贈与など特別の利益を受けた者がいる場合、又は、遺産の形成維持に寄与をした者がいる場合に、これらの事情を考慮せずに遺産を画一的に分割するのは不公平であるといえます。
そのため前者を「特別受益」、後者を「寄与分」といい、具体的な相続分を決める際にはこれらを計算に加えることになっています
特別受益は遺産と同様の性質の財産であるといえるので、遺産と特別受益の合計から各相続人の相続分を計算し、特別受益を受けている者は既にその利益を得ているので算定された相続分からその額が控除されます。
寄与分は形式的には遺産の一部ですが、寄与相続人の功労によって存在する財産であるため寄与相続人に帰属させるのが妥当です。そのため遺産からこれを差し引いて各相続人の相続分を計算し、寄与相続人についてはその相続分に寄与分を加えた額が具体的な相続分になります。
■共同相続人の協議による分割遺産分割は原則として共同相続人同士の話し合いによって行われます。
この話し合いは共同相続人の全員でなされなければならず、一人でも欠けていると原則として無効になってしまうため、戸籍の記載等から相続人の範囲の調査をしなければなりません。また、戸籍上の関係と現実の親族関係に差異が生じているケースも存在するため、そのような場合にはまず家事審判や人事訴訟によって身分関係を確定させる必要があります。
話し合いは全員が一堂に会して行われる方法に限らず、特定の共同相続人やその委任を受けた弁護士が原案を作成し、その原案につき持ち回り、全員の合意を得るという方法もあります。
■調停分割・審判分割共同相続人間での話し合いで遺産の分割についてまとまらない場合や、なんらかの理由によって話し合いを行うことができない場合には、家庭裁判所における手続きによって遺産分割がなされることになります(民法907条2項)。
家庭裁判所での分割には調停による分割と審判による分割があります。
調停による分割は、裁判所が介入する手続きですが、基本的には当事者である共同相続人同士の話し合いです。最終的な結論も各共同相続人がその意思によって合意した内容となります。
審判による分割は、調停とは異なり、話し合いではなく家事審判官が事実の調査や証拠調べを行い、共同相続人の希望等を考慮したうえで分割の審判を下す手続きです。
遺留分を害する遺贈や贈与があった場合に、遺留分の範囲内で遺贈や贈与を無効にするための遺留分権利者やその承継人による請求です。
遺留分は放棄する事もできるので、仮に遺留分を害する遺贈や贈与がなされた場合であっても遺言者の意思を優先し減殺を行わず遺贈や贈与を有効なものとして扱うことも可能です。
■遺留分減殺請求の方法減殺請求権の行使は必ずしも裁判によって行われる必要はなく、受遺者や受贈者に対する意思表示で足りるとされています(最判昭和41年7月14日)。
■遺留分減殺請求の効果減殺請求を行うと遺贈や贈与は遺留分を保全する範囲内で効力を失います。そのため、既に財産の引き渡しを行っていた場合には復帰した権利に基づき返還請求をすることができます。
■遺留分減殺請求が可能な期間減殺請求は、遺留分権利者が相続の開始や減殺すべき遺贈や贈与があったことを知ってから1年間(民法1042条前段)、又は相続を開始から10年間(同条後段)行うことができます。
遺言者自身が遺言の全文を自分自身で作成する遺言のこと。※ワープロや代筆、録音は無効
民法968条1項
「自筆証書によって遺言を作成するには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない」
注意点
遺言の内容を秘密として、遺言の存在だけを明確にする遺言のことです。自身で遺言を作成し、封筒に入れて封をします。そして遺言書を2人の証人の立会いのもとに、公証役場で、遺言者・公証人・証人(立会人)が署名・押印します。
民法970条
秘密証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない
メリット
デメリット
遺言者が、公証人の面前で遺言の内容を口授し、それに基づき、公証人が、遺言者の真意を正確に文章にまとめ,公正証書として作成する遺言のこと。
民法969条
公正証書によって遺言をするには、次に揚げる方式に従わなければならない
メリット
デメリット
被相続人の配偶者は常に相続人となります。※相続人か否かは戸籍によって決まるため、内縁の夫・妻、元の夫・妻は相続人にはなれません。